熊野路
佐藤春夫
【七日々々の山祭】
木挽等は荒い労働の骨休めとしてまた団体労働者の親睦の目的を兼ねて七日目七日目に山神を祭つて酒宴を楽しむ習慣がある。人里を離れた山間の生活ではこれぐらゐがせめてもの楽みなのであらう。尚、当時は博奕の盛んな時代であつたから、山中でも必ず流行したに相違ないが長歌の作者は平素痛くこの事を憎悪して子弟にも切に訓戒してゐたからわざと一言もこの事に言及してゐないのであると聞く。
底本:『定本 佐藤春夫全集』 第21巻、臨川書店
初出:1936年(昭和11年)4月4日、『熊野路』(新風土記叢書2)として小山書店より刊行
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2015.12.22 UP