熊野路
佐藤春夫
【たばね三分浦べではコッパ一把が二十四文】
たばねは一間の板を一束として藁縄で上下二個所をくくりたばねる作業。この賃銀が三分——九毛(文久銅一枚にも足りない)、しかし、コッパ一把が浦方へ運んで出て二十四文になる。これは先山の所得になる慣習であつたと聞く。当時のコッパ一把の大きさも知る必要があるのに今はわからない。現在はほんの一つかみ程であるといふだけはわかつたがこれは価の方がわからない始末である——いやはや。
底本:『定本 佐藤春夫全集』 第21巻、臨川書店
初出:1936年(昭和11年)4月4日、『熊野路』(新風土記叢書2)として小山書店より刊行
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2015.11.2 UP