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  1. 赤い猫

    那須晴次『伝説の熊野』

    田原

     田原の村から一里離れたある寺の住持が大変猫好きで一匹の赤い猫を貰い大事に育てていました。 大変大きくなりまして鼠も時々捕るようになりました。二月ほどたってからある夜住持が十二時頃であった、猫の外に出てゆくのを見ましたが別に気にもとめなかったが毎晩同じ時刻に出てゆくので住持も不思議に思いある晩猫の後からそっと随いてゆくと村の外れに出ました。やがて谷に入りました。杉の大木が大変しげって昼さえ小暗いというとある広場に出ると住持はあっと声をたてるところでしたが、こらえてよく見ると大きなく小牛ほどもあろう怪猫が大勢の猫どもと踊っているではありませんか。

     そして彼の赤猫はいつのまにか美しい娘に姿をやつして踊っている。住持は前後をも考えず逃出して恐しい一夜を明かしました。それより住持は決して猫を見ようとはしなかった、また彼の赤猫もそれっきり戻ってこなかったといいます。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

2019.9.10 UP



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