稚児の足跡と大人の足跡
那須晴次『伝説の熊野』
稚児の足跡
石ころばかりの傾斜のつよいだらだら坂を這うように杉林の間をぬって出ると今までとはかわって道も細く又木々は小さい。しばらくおもしろくもない所を行くと黒く日にやけた岩がある。それにははっきりとした幼子の足跡のようなのがある。里人はこれを「稚児の足跡」といっている。
昔怪人がこの岩を踏みしめてそうして奇絶峡に跳んだそうだ。ところがその跳ぶ間に大人になってそうして奇絶峡の岩についたという。それで今でもそこには「大人の足跡」があるそうだ。茫然と怪人をおもい浮べていると涼しい秋風が颯と両頬を舐めて行くのであった。
大人の足跡
(入力 てつ@み熊野ねっと)
写真は奇絶峡の大人の足跡。
2019.7.14 UP