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押分岩

那須晴次『伝説の熊野』

下芳赛

押分岩

 鬱蒼として昼尚暗い石の階段を踏んでゆくと一大巨巌が折裂けて或は幅の広さ一間にあまり或は狭まって三尺、社前に通ずる自然道をつくっている。その奥まった処に所請秋葉神をお祀りしているのである。

 元文年中のこと、ここ秋葉山の麓、不動堂に庵を結ぶ天室厭離という僧があった。かの僧信州秋葉山に至り常時の神官池永丹後に従い秋葉の神を勧請して海路芳養浦に無事着いたのであった。

 が不詳に因り神威を汚さんことを虞れ谷川を遡ってこの田川の秋葉山に達した。そうして鎮め祭 るべき社地がまだ成らないので一夜傍の藪中に安置し奉った。

 その夜里人ども秋葉山の方に当って一大音響を聞いたので翌朝山にいって見ると不思議や一大巨 巌中央より両断して神前に通ずる路自ら開けているのであった。

 これを見た里人は皆神の押分けたもうところであるといって押分岩と名づくるに至った。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

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2019.7.14 UP



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