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小房殿

那須晴次『伝説の熊野』

川添

 私の住んでいる村に昔小房殿と云うどこからともなく来た一人の武士がありました。自ら俺はここの殿様だといばり勝手に村人を使ったといいます。この武士金を多く持って居たのでそれを自分の家の後の大木の下へ埋めて置いたのだそうです。

 ある時村人に俺の子になれば金をやるといったがあまり無暴なので誰もその子になろうとするものがありません。間もなく武士は病死しました。その遺言に家の後の大木の下を掘れば俺の金があるから掘り出した者にはやるといって死んだのだそうです。村人は九ヶ月間かかって掘って見ましたが金は見つかりませんでした。終には大木まで掘り倒してしまいました。

 村人はがっかりしてそのまま帰ろうとしますと不思議な事にはその掘穴から一羽の白い鳥が飛びたちました。村人は非常に不思議に思ってこれはきっと何かたたるだろうといってその穴はもとの様になおしそこに石碑をたてその上大字を小房と改めました。それで今川添村大字小房と申すのだそうです。

小房村:紀伊続風土記(現代語訳)

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

2019.9.18 UP



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