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女僧と狼

那須晴次『伝説の熊野』

大都川

 大都川村大字大附と云う村に田舎の割合に立派な大きなお寺があります。千枚山福善寺と云う。もう百年位昔の事であるがその寺に女僧が一人住んでおりました。その時分の寺は今の様に立派な寺ではありませんでした。勿論小さなみすぼらしい寺であったのでしょう。ある晩女僧が念仏を唱えていると庭へ一匹の狼がやって来て何か骨でもたったのか非常にいたそうに喉をならしているので女僧は可愛そうに思って庭に出て、「おお狼よ人に食いついてはいけないよ今私が骨を取って上げるから」と云って狼の喉の骨を取ってやった。すると狼は非常に喜んで尾をふりながら山の方へ行ってしまった。それから明くる晩にまたやって来てくんくん鼻をならしている。どうしたのかと思って出て見ると狸の皮を持って来て庭に置いてあった。

 その明くる晩もその明くる晩も同じ様に皮を置いてある。その様にして丁度千枚皮を持って来たので女僧はそれを売って今日残っている立派なお寺を立てたのだと云う。それで千枚山福善寺と云う。

※入力者による注記
和歌山県すさみ町大附に現在、福善寺という寺院はないようで、福善寺は「福田寺」の間違いのようです。紀州弁ではザ行とダ行を混同して発音するのでフクデンジを福善寺と勘違いして書いたのだと思われます。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

2019.10.5 UP
2019.10.9 更新



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