ねじびゃくしんの伝説
那須晴次『伝説の熊野』
梵音寺と云うお寺は非常に景色の好い所にありました。境内からすぐ緑濃き大きな松原につづいてその下にきれいな日置川が流れていました。 ある夏の暑い日の午後一番の観音様がまわってきました、そして梵音寺の前を通りかかった時「この寺は中々好い寺だ。景色はよいし見はらしが何ともいへぬ。このお寺へお宿をさせていたこう。」と案内を乞いました。ところがここの住持が昼寝をしていかほど起しても起きません。観音様は腹をお立てなって「ここの寺はよい寺だが住持は悪いやつだ。」といって石段をおりました。そしてそこにあった大きな白びゃくしんの木をねじてどこかへ行ってしまいました。
ねじられた白びゃくしんの木は根から枝の端に至るまでぐるぐるとねじっていたそうです。そしてねじびゃくしんの下に観音様をすえ祠を建てました。大きな松は明治二十二年の水害に流されましたそうです。白びゃくしんの木とその下の観音様は私たちの小さい時までのこっていたそうですがとうとうそれも枯れてしまいました。
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2019.7.25 UP