首切井戸のあと
那須晴次『伝説の熊野』
どこの寄宿でも便所は伝説を生みやすいものですが田辺中学寄宿舎には他の寄宿舎では想像も及ばないくらい便所が多くの伝説を持っております。
僕等の寄宿舎のある所は錦水城の立っておった所だそうです。そうして便所の付近が丁度首切井戸のあった辺です。そのためにこの寄宿舎が建てられて間もない間は夜な夜なかつて首切井戸に投ぜられた人々の霊が現われて僕等の先輩を悩ましたそうです。今でもその霊が呪わしくも着きまとって便所の敷石はきちんと畳まれておりません。直しても直してもその翌朝は元のようにだらしなく乱れ敷かれております。
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2023.7.20 UP