米を洗う弁財天
那須晴次『伝説の熊野』
今は三栖村唯一の村社珠簾神社の一社あるのみだが、以前は各字悉くに小祠を有し村内通じての社数実に多かったのを今を去る凡そ三十九年前明治九年頃一度整理合祀してその数を減じ更に明治四十二年に至って合祀の結果村内一社となった。
その合祀前のことの出来事であるが三栖村字三栖切岩には切岩神社として市岐島姫命を祀り現今作れる砂坊跡に大松生い茂った中に祭られ彼の川の中島にあった。所謂弁財天として特に世に尊崇の声高く毎月朔日の朝は弁天様が米を洗うのだとてここより流るる水が白く濁ると言い伝えられたが正しく毎月一日に川の流れが白く濁った。誠に不思議なことであった。現今生存している五十六七の人々はよくこの事を見たということだ。その後合祀せられてからはかかることはないとのことである。今はその辺の沢から富田川迄も蛇の通道があって大水の時などはよく蛇が現われるといっている。
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2019.7.14 UP