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衣笠城趾

那須晴次『伝説の熊野』

三栖

 三栖村大字中三栖弥五郎谷に在り。山麓より上ること八町にして山頂に達す山頂平坦なる所昔の城址なりと。

 土人伝えて云う、昔百合若大臣という人籠城したるに水の道を止められしにより、詮方なければ敵をして脅かしめん為、白米を以て馬の背に流し、馬を洗うが如く見せ装おいたりと謂えども戦況詳ならず。

 又、文永の代(凡そ六百六十年前)亀山天皇の御宇、鎌倉北条時宗執権の頃愛須八郎源経信の居城たりしという。今の尋聲寺の石垣はこの城の堀の石を取りて築きたる者なりと続風土記に見えたり。

 現今この山頂樹木生ぜず僅かに小松の点々散生せるのみなれども山上眺望絶佳にして田辺湾を脚下に集めて見晴よし。而して現今この山上に東宮殿下御成婚の記念として衣笠遊園地を作り益々その眺望を佳くせり。

    みすまるの里を照らして玉なせる月さし登る衣笠の山

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

三栖荘:紀伊続風土記(現代語訳)

中三栖村:紀伊続風土記(現代語訳)

2019.7.14 UP



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