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雷の落ちぬ村

那須晴次『伝説の熊野』

下秋津

豊秋津神社

 昔々それは大昔。下秋津村にしばしば雷の神が落ちて、その都度村人を害した。村人は雷がゴロゴロ鳴り出すとだれもかれも恐怖するのでした。或は蚊帳の中にもぐり込むもの、鍬を戸口に立てて桑ばら桑ばらというもの、まるで気が狂ったようでした。それで雲の森さん(下秋津の鎮守神、熊野王子の一)が非常にお怒りになってある大雷雨の日、雷の神の落つるを見たと思うとその頸を引つかまえてしまった。

 雷神は大変驚いてひとえに天上に帰らして呉れと頼んだ。そこで、雲の森の神は雷神に厳かに言い渡した「これから以後は決して下秋津に落ちては承知しないぞ」ということで、やっと、雷神は天上に帰ることができた。それ以後下秋津には決して雷が落ちた事がなかった。

 しかし今から五六年前どうしたことか一回落ちたことがあった。村人達は驚いたそれはその年のお祭にお渡りを廃したのが祟ったのだと言うことに想い至った。そこで新たに神輿を買い、競馬を催し神意を慰むべく賑やかな祭をした。それ以後は雷が落ちた話を聴かない。

 雷が嫌いな人があれば下秋津村にひき越するがよい。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

写真は雲の森さん(豊秋津神社)。

豊秋津神社:熊野の観光名所

雷を捕まえた話:熊野の説話

下秋津村:紀伊続風土記(現代語訳)

2019.7.14 UP



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