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行の森

那須晴次『伝説の熊野』

田辺

 田辺の町の東に尽きんとするところ湊村三郡製糸場前に少しの広場があります。古老の言により ますと数百年の昔のこと、奇特な行者が行をするために埋まった所だそうです。それから後埋まった人は二三人だそうですがそれらの人々が埋まる時には身体を清めて自分の信ずる神に祈りを捧げ白衣をつけて深さ二三間、一間四方くらいに掘って、その周りを石で甃んでその中に這い入る時には自分の財産及び衣類や暫くの間食って行く事の出来る色々な腐らないような旨い果物などを持って入ったのだそうです。中に入ってからは上を石で蓋うてもらって石の上に正座して一心に神を念じ腹が減って来ると 果実を少しずつ食ってその食物がなくなった時には脚を念じつつその死をまったそうです。それで 町の人々はここを行の森と云って尊び今でも掘らないで草地にしているのだそうです。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

2023.7.20 UP



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