会津橋と獅子舞岩
那須晴次『伝説の熊野』
「紀州田辺にすぎたるものはお寺三ヶ寺に会津橋。」昔はかく唄われて田辺の名所であったとの事です。当時の橋は現在のとは違い唐金のぎぼしが付いていて、その二番目のぎぼしに立願して咳を治した伝説があります。この橋は維新前の大水害に流れて阿波に行き間もなく阿波から獅子舞岩が流れて来たそうで当時の人は橋と岩との交換だ、と云ったそうです。
獅子舞岩は名の通り形は舞子によく似てます。頭部だけしか地上に現れて居りませんが見ると成程似ていると思わせます。岩が流れて来た当時雨の降る寂しい夜には、岩が「阿波へ帰りたいよ う」と繰り返し繰り返し泣いたとの事です。
獅子舞岩はそれから後、もう阿波へ帰る事なしに田辺の名物となり、田辺の伝説に数えられました。秋晴の四国の山々が雲の様に見える時はそれを眺めて、今なお愛郷の念をもようしている事でしょう。
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2019.7.16 UP