むかしの新年
佐藤春夫
身は六十五歳の新春を迎へて
また一つ新年が来て
思ひ出されたのは
むかしの新年のすばらしさ
万国は平和に
祖国は上昇期にあり
わが身は若く
家には椿の花ざかり
熊野川に筏は長く
大逆事件の町も戸毎に国旗翻り
底本:『定本 佐藤春夫全集』 第2巻、臨川書店
初出:1957年(昭和32年)1月3日発行の『東京新聞』夕刊に掲載
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2015.9.3 UP