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熊野路

佐藤春夫


【噂やまやまさき山は斧をかたげて山入し】

 それでも何しろ思ひがけない好景気につけても、口口に長州征伐の軍などよもやまの噂さまざまに喋り交して先山(さきやま)は斧をかたげて好景気の職場の宝の山に入る。先山といふのは山稼ぎの先達で棟梁である。これは木挽職人より先に山に分け入つて立樹を木材とするために検分し準備して置く職人である。

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底本:『定本 佐藤春夫全集』 第21巻、臨川書店

初出:1936年(昭和11年)4月4日、『熊野路』(新風土記叢書2)として小山書店より刊行

(入力 てつ@み熊野ねっと

長うた狂歌「木挽長歌」:熊野の歌

2015.11.2 UP



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